高配当株にコツコツ長期投資

書評中心に記事を書いてきましたが、装いも新たに、高配当株投資をテーマに様々なことを書き散らしていきたいと思います。

書評『エンジェル投資家』ジェイソン・カラカニス 日経BP社 2018年

エンジェル投資家とは、スタートアップ企業に投資を行う人です。

かつての日本にも、有望な若者に投資をして、事業を育てようとする

パトロンのような人は存在しました。

 

しかし、「エンジェル投資家」というような役割を明確に示す

概念=単語は、存在していませんでした。

 

そういう意味で、本書は、日本の資本主義をさらに前進させるために

必要な投資家の役割について、定義づけ、どうしたらなれるのか?を

具体的に説明をしている、これまで存在しなかった本です。

 

いわば、「投資家になるには?」

という問いに回答する教科書です。

 

著者であるジェイソン・カラカニスはシリコンバレーを拠点に

エンジェル投資家として活躍する当代随一の投資家です。

代表的な投資案件は、ご存知の方も多いであろうウーバーテクノロジーズ。

投資額の何万倍のリターンを得たそうです。

 

本書の内容は、まさに投資家のための教科書というべきで、

投資をやっていく上で気になる内容が目白押しです。

 

例をあげると、エンジェル投資に向いている人とは?、金がなくてもエンジェル投資家になれる、創業者にどんな質問をすればいいか?、投資案件の管理方法

等々、本当に具体的で効果的なアドバイスを惜しみなく提供してくれています。

 

本書の一番の読みどころだと感じた箇所を以下に引いておきます。

 

”いつもこう聞かれる。「どうやって10億ドルの投資先を見つけるのか?」

10億ドルの会社を選ぶのではない。10億ドルの創業者を選ぶのだ。”

 

この部分です。ジェイソンは、要するに儲かる事業アイディアがあるわけではなく、

お金になる創業者は誰なのかを見極めることが大切だと説いています。

 

また、エンジェル投資家の本質を明確に言い表す、

こんなことも言っています。

 

”基本的にエンジェル投資家の仕事というのは、ここで説明したようなチャンネルを広く見渡し、いちばん有望そうな相手を選ぶということに尽きる。大学のスポーツチームのスカウトが高校を卒業する選手を探すのに似ているかもしれない。”

 

要するに、これから成功しそうな人を見つけて、投資をするのが、

エンジェル投資家の仕事ということですね。

 

日本に限らず世界中で優秀な若者がわんさか出てくる時代に入っています。

自分自身がひとかどの人物になるよりも、ひとかどの人物になりそうな人に投資したほうが、儲かる時代が日本にもやってくるはずです。

 

そんなときの備えになる1冊です。

書評(小説)『紅い鷹』矢月秀作 徳間書店

この本を読むためなら、今日は寝不足になってもいい。

そんな本にときたま出会うことがあります。

 

『紅い鷹』は、まさにそんな小説です。

 

ジャンルはハードアクションですが、

読み進めるうちにどんどん思いもよらない展開が待ち受けています。

 

主人公の工藤雅彦は、大手の文具メーカーに勤める会社員。

営業成績優秀なのに、ある日、リストラに近いような左遷人事を言い渡されます。

納得がいかない工藤は上司に噛み付き、査定のやり直しを求めます。

 

人事本部長の佐久本と課長の岡部と面談をしました。

結局、査定をやり直したものの、言い渡されたのは、やはりリストラ部屋への異動でした。リストラに近い処遇を受けても、恋人である亜香里は、献身的に工藤を支えていきます。

 

本作の冒頭は、主人公の工藤が高校生に絡まれるシーンから始まります。

病気の母親を守るための大切なお金を無慈悲な若者にとられそうになる工藤。

ボロボロにされながらも必死に抵抗しますが、意識は遠のいていきます。

 

そこに一人の男があらわれ工藤を窮地から救い出します。

男の名は、小暮俊介。大手スポーツ用品企業の

小暮スポーツの社長です。

 

けがの完治した工藤に、小暮はトレーニングセンター行きを

命じます。

 

就職先の提案を受けた工藤は、てっきり小暮スポーツのインストラクターの養成所と思い、センターでのトレーニングをうけておりました。

しかし、そこは、工藤の思惑とは異なりとあるプロフェッショナルを養成するための

”学校”でした。その職業とは、亡くなった工藤の父親とも関係のあるものだったのです。

 

工藤、工藤の亡き父、母、小暮、佐久本、恋人亜香里。

 

登場人物全員が、深い闇を抱えていることが

本作のポイントであり、最大の読みどころとなっていきます。

 

臨場感たっぷりに情景が思い浮かぶのは、作者の筆力のたまものと

いえるのでしょう。読みだしたら、先が気になってしょうがなくなる。

一気読み必至のアクション小説です。

 

書評(ビジネス)『迷ったら茨の道を行け』佐田展隆 ダイヤモンド社

本書は、オーダースーツの製造小売り業を営むSADAの佐田社長が

その経営者としての半生を振り返った意欲作です。

 

家業を継いですぐに大きな負債を抱えたエピソードや、途中経営者をやめ再びサラリーマンになったり。また、経営者として舞い戻ってきたりと、激動の半生が生々しく振り返られております。

 

佐田社長が繰り返し書いていることの中に、

彼が家業を盛り返し、唯一無二の企業に育てたヒントが隠されていました。

 

今回はそのポイントを紹介していきたいと思います。

 

①大学時代の友人・知人をとても大切にしている

難局を迎えると、佐田社長は胸襟(きょうきん)を開いて、昔の仲間に教えを請い、

活路を見出していきます。決して独りよがりに意思決定をするということがありません。

佐田社長は一橋大学の出身ですが、持つべきものは仲間であると実感できるエピソードが満載です。

 

②テーマにもなった祖父の教えを忠実に守っていること

本のタイトルにもなっている”迷ったら茨の道を行け”という教え。

実は、佐田社長の祖父によるものです。

 

③私利私欲に溺れず、事業に邁進している姿勢

佐田社長がピンチを迎えた時に救世主が表れているのですが、

助けてくれた人が手を差し伸べた理由というのが、

人のために動くことしか考えないという佐田社長の姿勢です。

私利私欲のために事業を行う人であれば、手を差し伸べられることは

なかったのかもしれません。

 

この3つに共通しているのは、いずれも

人を大切にしているという点です。

仲間や家族の言葉を大切にし、人のことも大切に考える。

 

それこそ佐田社長の持つ大きな武器と言えます。

 

中小20万社が後継者不足で倒産すると言われている昨今。

”家業を継ぐ”という選択肢の重さと魅力を丁寧に伝えていることこそ

また本書の持つ最大の意味ではないかと読んでいて感じました。

 

中小企業が大量倒産に陥る!?

 

そう遠くない将来に訪れるかもしれない待つ日本の危機に

まったをかけるきっかけになる一冊かもしれません。

 

書評『ネットではじめる主婦のヘソクリ株』ノマディック編著 技術評論社

専業主婦にとって、ヘソクリの創出というのは、

今でも一大テーマなのでしょうか。

 

今や共働き世帯が増える一方なわけですが、

自分の資産をコツコツと増やしたい主婦の方もいることでしょう。

 

本書は、主婦のヘソクリを株式で作ることを薦めている本です。

「株ってなんだかこわいし、よくわからない」という人こそ

一度目を通してみると良いかもしれません。

 

本の中身ですが、

 

株式の仕組みや、株をどうやって買ったらいいのか?売ったらいいのか?

株を買うときはどんな情報のどんな点に注意すればいいのか?

などなど

 

誰でもわかる簡単な言葉で書かれています。

 

株の基礎を知り、証券口座を開き、実際に手続きをするまでの

良き入門書となっております。

 

株に関する知識がある人にとっては、かなり簡単な内容ですが、

小学生や中学生向けの金融教育の教科書としても非常に使える本です。

そして、働いている女性こそ読むべき本かもしれません。

 

今は、超低金利時代です。

銀行にお金を預けておいても増えていくことはほぼありません。

私は、銀行は便利なコインロッカーだと思っています。

 

定期預金に預けたとして、年利は0.01%

微々たる金利しかつきません。

 

一方で株式を購入することで得られる配当金を例に取ると、

割のいい会社だと、年間で1株あたり150円程度の配当がもらえる会社もあります。

 

100株25万円だとすると、年間で1万5千円の配当がもらえます。

150円÷25万円=0.06% 利回り約6%

 

もちろん、株価が下がれば、その配当金はもらえなくなってしまうかもしれません。

配当金には税金もかかります。

 

それでも、ただただ銀行にお金を預けることだけを考えれば

極めて合理的な資産形成方法だと言えます。

 

その配当金を再投資すれば、さらに大きなリターンが見込めるかもしれません。

 

もっというと、これからの時代、自分の資産形成だけではなく、

自分の子どもの資産形成にアドバイスできることも親の大きな役割の1つとなっていきます。

 

適切な金融教育を自らの子どもに施すためにも、

ここいらで本格的に学んでおくと良いかもしれません。

書評『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』幡野広志 PHP

私は基本的に本は、本屋さんで買う主義です。

 

目的意識のある読書だけでは世界が広がらないので、

本屋さんの棚をなんとなく見回して、

面白そうな本を探しだして買うのが好きです。

 

街でナンパをする感覚に似ているかもしれません。

きれいな人を見つけては、とりあえず声をかけてみる。

 

棚から本を手に取って、パラパラ見て見る。

 

なんとなく似ていませんか。

・・・似ていないか。

 

それはそうと、本書は新聞の広告を見かけて、

コピーを読んで、即ポチリました。

 

理由は、著者が同じ35歳で、2歳の息子がいるという共通点があったこと。

そして、余命宣告を受けており、本の構成が子どもへのメッセージとなっていること。

同じ子を持つ親として、これは読まないわけにはいきませんでした。

 

まさに子どもでも理解できるような言葉で書かれている本なので、

夢中であっという間に読んでしまいました。

 

特に印象に残ったのは以下の3点です。

 

①学校で学ぶべきは理不尽さ

 

②面白い人になるべき

 

③金融教育の重要を問いている

 

幡野さんは、命の尊さなど道徳的なことは一切主張しません。

それよりも、自分がいなくなった後の世界で息子がサバイブしていくには

どうしたらよいか。非常に実践的なアドバイスをしていきます。

 

父から息子への真摯なメッセージを読むにつれ、

自分は子供にどう生きてほしいのか?

そして、自分は父親としてどう生きていくのか。

 

そのことを立ち止まって考える非常によい機会となりました。

書評『アラブの大富豪』前田 高行 新潮新書

サウジアラビアの記者、カショギ氏が殺害されたというニュースが世間を騒がせています。改めて、中東の国サウジアラビアという国に興味を持った人も、

多いのではないでしょうか。

 

ソフトバンク孫社長が、大規模なファンドを作るために

手を組んだのもサウジアラビアでした。

 

私も、名前は知っているけど、実態は皆目わからないという状態でしたので、

本書を紐解いてみることにしました。

 

本書は、題名にある通り、中東の中でも取り分け裕福な国である、

サウジアラビアアラブ首長国連邦における、王族の実態に迫る非常に意欲的な作品です。

 

著者は、中東の企業でも働いたことのある方で、

まさに内情に精通している人というわけです。

 

何人か登場する中でも私が特に魅力的な人物だと思ったのは、

サウジアラビアのアルワリード王子です。

 

学生時代には、アメリカに留学し、勉学に励み、卒業はビジネスに没頭していく

アルワリード王子は、事業家としてキャリアをスタートさせますが、

早い段階から投資家として頭角を現すようになります。

 

王子の投資スタイルと一言で表すと、

 

ホワイトナイト”であるということに尽きます。

 

ホワイトナイトとは、白馬の騎士と言われ、

企業がピンチの時、業績不振で資金が必要な時に

手を差し伸べる存在です。 

 

具体的な投資スタイルについて、書くと、

「底値で買い、長期間保有する。」

というスタイルです。

 

1つアルワリード王子が決めていたのが、

ブランド力がある企業に投資をすることでした。

 

投資家の理想的な姿と言えるのかもしれません。

実は、大手銀行のシティバンクを窮地から救ったのも

このアルワリード王子と言われています。

 

日本国内で投資というと、どうしても株価の値動きに右往左往する、

投機のイメージがいまだ根強いですが、気に入った企業がピンチの時に

手を差し伸べ、長期間保有するというスタイルは、

投資に馴染みの薄い人にとっても勉強になる部分が多いと思います。

 

特に、業績不振で株価を大きく下げたライザップ。

ゴーン・ショックとも呼ばれ大きく揺れ動く日産。

この様な企業で、最近株が売られている状況を見るにつけ、

アルワリード王子のような投資手法を見習うべきなのではないかと

思うわけです。

 

書評『一流選手の親はどこが違うのか』杉山芙沙子 新潮新書

本書は、有名なテニスプレイヤーである杉山愛選手の母、芙沙子さんが書いた本です。

実は、杉山さんのコーチは、母である芙沙子さんが勤めていたそうです。

 

今回は、本書の書評を通じて、子育てに関する学びを共有していきたいと思います。

 

題名の通り、本書は、一流アスリートの親に共通するポイントをあぶりだした本です。

宮里藍石川遼錦織圭選手のご両親へのインタビューを論文にまとめたものが

ベースとなっております。

 

その教育方針には、十数項目の共通点があるのですが、

私がとりわけ注目したのは、以下の3つです。

 

①外遊びが多かった

②競技を始めた目的は家族の団欒だった

③練習時間は1日3時間以内

 

まとめると、幼少期には友達とたくさん外で遊んでいたいうこと。

家族でスポーツを楽しむために、その競技をやっていたということ。

杉山さんも、本来のスポーツの目的は楽しむことであり、それを忘れてはならないと言っています。中には、根を詰めすぎて、選手をつぶしてしまうコーチもいるそうです。

 

そういう意味で、③ともリンクしますが、

長時間に渡って練習をすることはないというのも印象的です。

 

一流への道の1つとして、一万時間の法則などもありますが、徒に長時間練習することよりも、毎日一定時間を練習に充てることのほうが大切ということなのでしょう。

 

著者の杉山さんには、スポーツを通じて人間性も磨いていくという哲学があります。

 

自身の子育ての経験から、子どもの自主性を尊重し待つこと。

その行動をつぶさに見つめ観察すること。礼儀やコミュニケーションを大切にし

人間性を養っていくこと。などをとても大切にしております。

 

杉山さんのスタンスは、競技を共に楽しみ、共に悩むということ。

そして、常に選手を観察して、力を最大限引き出そうと伴奏する姿が印象的でした。

 

子育てにおいても同様のことが言えるのではないでしょうか。

一緒に育ち、一緒に楽しむというスタンスを持つことが重要なんだと思います。

 

一流のコーチ像とあるべき親の姿とは何か。

必要な要素はとても似ているなと本書を読むと感じます。