『村上春樹の作り方』と言い換えてもいいくらい、
小説家という職業について、赤裸々に語られている本です。
私自身は、小説家になりたいと思ったことはなかったですが、
そんな私でも「小説を書いてみようかな」と思ってしまう非常に力のある人を刺激する一冊です。
「力がある」という点をさらに具体化すると
執筆のスタイルや創作の仕方などが、ほぼ包み隠さずに書かれています。
マラソンランナーで例えると、一日のメニュー、スケジュール、フォームの作り方、
シューズの選び方、ライバルや同業者に対する気の持ちよう、等々。
赤裸々に語られています。
この本を通読すると、小説の作り方が網羅的に理解できてしまうのではないか?
とド素人ながら思ってしまうほどです。
しかし、村上氏がここまで包み隠さず語ってしまったのは、
35年間小説家として生き抜いてきた実績があるからなのかもしれません。
たとえば、35年連続でフルマラソンに出場した選手であれば、
そのコツや振り返って思うところなどあますところなく教えてくれそうです。
つまり、誰にでもマネできるけど、ほとんどの人が真似できない・真似しない領域まで到達、壁を超えてきた経験があるからこそ、寛容さが醸成され本書が執筆されたのではないか。私はそんな風に思うのです。
この本が人に勇気を与える本になっている根拠は、繰り返しになりますが、
村上氏がとってきた小説家としての行動が、誰もが努力次第でマネできるものだからです。
・若い頃に大量に読書
・早寝早起き
・一日に書く量を決めてしまう
・毎日ランニングをし、フィジカルの強さを担保
・その仕事しかやらない環境を作ってしまう
・マイナス評価を無視する=気に留めない
さながらアスリートといっていいような生活習慣です。
もちろん根底に勤勉さが無い人には真似できない事ですが、
凡人であっても、努力次第でなんとかなると思いませんか?
この中で一番不可抗力となりやすい取り返しのつかない項目は、
若い頃に大量の読書をしているという点だと思います。
これは実はなかなか真似ができない。大量の読書経験は小説家の必要条件だと思いますので、これが無い方はきっぱり諦めてしまうのも1つの手です。
家庭環境や自ら読書に向かうきっかけがなければ、
20代に突入するまでの異常な読書経験というのはなかなか培われない気がするのです。
20代30代になってからの読書も当然血となり肉となると思いますが、
10代の頃のみずみずしい感性に与える影響ほど、強烈では無い気がしています。
これまで多くのインタビュアーが創作の秘密に迫る際、どんなものを読んできましたか?とバックボーンなどのクリエイターの中身に迫ってきたことは疑いようのない事実だったと思います。
しかし、本書では、ソフト面よりもハード面がクローズアップして
語られています。
料理で例えると、彼が読んできたレシピではなく、フライパンの使い方や、火加減等、
まさに仕事を覚えたい人が真似すべきプロの仕事ぶりが語られています。
なので、強い言い方になりますが、本書を読んで、何も参考にならないと
いう結論を下す人は、正直どんな分野のプロにもなれない可能性が高いと思います。
なぜか?
せっかく料理本を読んだのに、料理の作り方が全然分からなかったというタイプの人だからです。
でも、そのことに自覚的な場合、「どんな分野のプロにもなれないんだ」と
自ら気づいたとしたら、そういう謙虚な人なら有益な自己分析につながるはずです。
本書は、情熱大陸やプロフェッショナルよりも、
3分クッキングやがっちりマンデーに近いコンテンツだと思います。
明日から使えるノウハウになりえます。
やっていて自然と継続できる習慣こそ、
その人の仕事を作り出す。
自らやるべき仕事は何なのか?
自問自答している人にとって救いの書になる可能性は正直高いと思います。
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