保育士のイメージを一変させる書籍が必要だと感じていたが、その一端を担う本が登場した。著者は38年間保育の仕事に携わってきたエキスパート。
井上氏は保育のゴールは「自己肯定感を持ってもらうこと」だと主張する。
保育は誰でもできる仕事と主張する人もいることを考えると、
人に自己肯定感を持ってもらうと聞くとそんなに難しい仕事?という声もあるかもしれない。
本書は、保育士になるきっかけから始まり、母親業との両立、園長になってからのこと、今後の保育園に対する思いなどが語られている。
保育士を目指す人はもちろんのこと、イメージばかり先行して、実態を知らない人
にも是非手にとってほしい1冊だ。「子どもと遊ぶ仕事でしょ?」というような心ない言葉も聞かれる保育士だが、この本を読めば、そんな甘いイメージは一変されるだろう。
あくまで参考だが、保育士に求められるスキル例を列記してみたい。
子どもをしっかりと見守り安全を確保→警備業の要素
子どもに刺さる遊びを生み出し実行する→企画、プレゼンテーション力
計画を遂行するために集団をスケジュールどおりに導くリーダーシップ→ツアーコンダクター的要素
様子の変化をいち早く読み取る→観察力
ぐずる子どもを説得し行動を促す→言葉で人を乗せる表現力、説得力
落ち着いた午睡を実現するための寝かしつけ→子どもごとのツボを押さえスムーズに入眠させる。
多忙な保護者たちに子どもの様子を的確に伝える力→要約力
あまりクローズアップされないが、一流の保育士たちは、ビジネスの世界でも重宝される能力をいくつも兼ね備えたエキスパートである。
また、井上氏が園長に就任してからのエピソードも興味深い。
近隣との騒音問題も各地で勃発しているが、井上氏はクレームの声をあげた夫婦を保育園に招待をしている。しっかりコミュニケーションをとり、子どもの実態を見てもらい、最後には「本当に良い園ですね」と言わしめている。
プロ意識を持って、子どもの笑顔を見ることを目指した井上氏が為した仕事は非常に大きい。