アメリカの大学生は、桁外れに勉強している。
読み始めてすぐに気がついた。
本作品は、ナイキの創業者フィル・ナイトのサクセスストーリーだが、
実は、精巧に編集された日記でもある。
数十年前のエピソードも非常に克明に綴られており、いかにフィルが優秀なエッセイスト&ルポライターであったかが分かる。
その能力を支えているのは、夥しい数の読書に裏打ちされた表現力、背景知識に加え、
何でもメモにとり、残しておく習慣にある。
また、ウォーレン・バフェットはフィルを天性のストーリーテラーと呼んでいるが、
それを裏付けるエピソードも紹介されている。
息子のために毎日オリジナルの寝物語を語っていたことだ。毎日ネタを探して、アウトプットする。芸人さながらである。
彼は、プライスウォーターで会計士をやりつつ、NIKEを立ち上げ、毎日6マイルを走っていた。その極めつけが就寝前の息子への寝物語であった。
こんなにバイタリティがある男はなかなかいないだろう。
本書には、ビジネスマンとして実際に役立つノウハウが満載である。
交渉の準備、チームのあり方、マネジメント、様々な学びがある。
その中でも私は、個人の能力を最大化していくためにどうやって学んでいくべきなのか。それへの回答の書となっていると思う。
仕事で多忙を極める男が、走ることを習慣にし、子育てにもしっかりコミットする。今の日本のビジネスマンの中でここまでできる人は一体どれだけいるだろう。
もしかすると、世界にもここまでバイタリティある男はいないかもしれない。
本書には、生産性向上にあえぐ現代日本のビジネスマンのいち理想像が記されている。1970年代から、自然と副業がなされ、学生たちが勉強していた。アメリカは歴史の浅い国だが、若者はバイタリティに溢れ、最大の経済大国であることを改めて実感してしまう。