高配当株にコツコツ長期投資

書評中心に記事を書いてきましたが、装いも新たに、高配当株投資をテーマに様々なことを書き散らしていきたいと思います。

書評『はじめての人のための3000円投資生活』横山光昭 2016年

一般庶民にとっては、銀行はもはやコインロッカーと化している。

と感じるようになった。

 

どれだけお金を預けても、大して利息はつかず、ある意味資産を寝かせているだけ。

このことに多くの人が気づき始めている。

 

「貯蓄から投資へ」というのは、徐々に進み始めていると思うが、まだまだ、金融教育が弱い日本人にとっては、とっつきやすい教科書が必要になると思う。

 

そんなときに、非常に参考になる本だと思う。

 

庶民派ファイナンシャルプランナーを自認する著者の主張は極めてシンプルだ。

 

「身の丈にあった投資で、長期的に資産を形成する。」

 

投資と聞くと、リスクに身を投じていく危険な行為と捉える人も多いかもしれないが、

実は、チリも積もれば山となるを実践するのが賢い投資であると主張。

 

3000円からはじめるというところがまたミソだと思う。

 

あまり稼ぎがない人でも、月々3000円であれば、何かを我慢して投じられる額ではないかと思う。

 

初心者に最適な投資として、本書では、投資信託のインデックスファンドがおすすめされている。

 

ポイントは、源泉徴収なしを選択して、特定口座で登録をしておくことらしい。

 

小口投資を開始するにあたって、非常に具体的に説明されているので、

中学生でも理解することが可能だと思う。

 

内容は、投資に限らず、収入の15%を貯蓄にあてるべき、とか給料の7.5か月分は緊急日として、プールしておく、など、FPらしいアドバイスも満載だ。

 

社会人になる前に押さえておきたい内容であるし、是非早いうちに子どもにも読ませておきたい本である。

書評『わたし琵琶湖の漁師です』戸田直弘 2002年

注意!この本を読んでしまうとバス釣りがちょっと嫌いになる可能性があります。

 

と宣言したくなる。そんな1冊だ。

 

著者はこの道20年以上の大ベテラン、琵琶湖で漁師をやる戸田さん。

 

内容は、琵琶湖で取れる魚や具体的な漁の方法などが親しみやすい戸田さんの語り口で語られる。淡水で漁師をやる上でのコツなども紹介されている。

 

しかし、とりわけ著者も読者もボルテージが上がってくるのは、

第四章「ええかげんにせえ!ブラックバスブルーギル」からである。

 

腹がふくよかな魚のことを「きんまい魚」というらしい。

琵琶湖で増え続けるきんまいブラックバスの腹を割くと

中からは、琵琶湖で取れる美味しい魚たちがわんさか出てくるらしい。

 

外来魚の恐ろしさを思い知らされる。

 

しかし、一番恐ろしいのは、自国に古来より生息している生物や人々の生活が脅かされているのに、呑気に趣味に打ち込むバサーたちの存在である。

 

バサーとは、ブラックバスを釣ることを趣味にしている人々の事を指す。

 

本書を読むと、「琵琶湖」でブラックバスキャッチアンドリリースすることが、

いかに知性なき所業かを思い知ることになる。

 

ブラックバスは一年で26センチ。その後年間8センチずつ大きくなる。

稚魚の真下を泳いで、守る修正を持っているため、、稚魚の生存率が高い。

 

サバイブする能力に長けた魚なのである。

 

どんどん、琵琶湖の魚が脅かされる中、心無きバサーたちは、

「釣り人の権利を守ろう!」などど声高に叫んだりするらしい。

 

言葉を失うどころか気を失いそうになるほど愚かな人々である。

海外の人たちにできれば知られたくない日本の恥部と言いたいくらいだ。

 

著者の言うとおり、そこまでしてバス釣りがやりたい人は、

国が定めた湖で釣りを楽しめばよい。

 

何も日本のマザーレイクで自分本位の趣味を展開する必要はこれっぽちもないのだ。

 

物事を知らないことは恥ずかしいことではない。ただ、優先順位を履き違えて、自分本位に行動するのはとてつもなく恥ずかしいことである。

 

琵琶湖の漁師戸田さんは、そのことを教えてくれる。

 

書評『「ビットコイン」のからくり』吉本佳生 西田宗千佳 2014年

ビットコイン=仮想通貨と聞いて反応はいくつかに分かれるだろう。

 

①損した!二度とかかわりたくない。

②興味はあるけどなかなか手が出せない。

③単語は聞いたことがあるけど、ちんぷんかんぷん。

 

本書は、②③の方が読むと非常に参考になるのではないかと思う。

 

ビットコインとは、元々中本哲史と名乗る人物が論文を書き、生まれた仕組みだ。

中本論文を読んだ技術者達が作り出したのが現在のシステムとなっている。

 

特に2014年マウントゴックスという取引所の破綻によって、一気に知名度が上がったが、

実は、ビットコインの詳細を知るものはあまりいないというのが、今も続いている実態ではないだろうか。

 

この本は、二人の共作だが、吉本氏は銀行実務にも明るく、西田氏はITに関するエキスパート。つまり二人の専門家が手を組みビットコインについて語っているのが本作である。

 

ビットコインの是非については、最終的には個々人が判断すべき問題だと思うが、

なぜ生まれ、どのように進化していくのかについては、知っておくべきであると、読後に思いを新たにした。

 

世界の国々が仮想通貨の規制に走っている昨今であるが、

その国々の通貨がそもそも信頼に値するのか、そのあたりの分析もされているので、

「現代貨幣論」といってよい1冊である。

 

話は少し飛躍するが、アメリカ人は資産を株で保有することが多い国民らしい。

日本人もそろそろ銀行に全幅の信頼を寄せることを見直したほうが良いのではないか?

 

中流層にとっては、銀行は既に「コインロッカー」化していると感じる。

 

ビットコイン(仮想通貨)について理解を深めていくことは、今後の資産運用をどうしていくのか、資産形成をどうしていくのかを考える上で、重要なヒントを与えてくれるに違いない。

 

その後方支援をしてくれる1冊である。






書評『SHOE DOG』フィル・ナイト 2017年

アメリカの大学生は、桁外れに勉強している。

読み始めてすぐに気がついた。

 

本作品は、ナイキの創業者フィル・ナイトのサクセスストーリーだが、

実は、精巧に編集された日記でもある。

 

数十年前のエピソードも非常に克明に綴られており、いかにフィルが優秀なエッセイスト&ルポライターであったかが分かる。

 

その能力を支えているのは、夥しい数の読書に裏打ちされた表現力、背景知識に加え、

何でもメモにとり、残しておく習慣にある。

 

また、ウォーレン・バフェットはフィルを天性のストーリーテラーと呼んでいるが、

それを裏付けるエピソードも紹介されている。

 

息子のために毎日オリジナルの寝物語を語っていたことだ。毎日ネタを探して、アウトプットする。芸人さながらである。

 

彼は、プライスウォーターで会計士をやりつつ、NIKEを立ち上げ、毎日6マイルを走っていた。その極めつけが就寝前の息子への寝物語であった。

 

こんなにバイタリティがある男はなかなかいないだろう。

 

本書には、ビジネスマンとして実際に役立つノウハウが満載である。

交渉の準備、チームのあり方、マネジメント、様々な学びがある。

 

その中でも私は、個人の能力を最大化していくためにどうやって学んでいくべきなのか。それへの回答の書となっていると思う。

 

仕事で多忙を極める男が、走ることを習慣にし、子育てにもしっかりコミットする。今の日本のビジネスマンの中でここまでできる人は一体どれだけいるだろう。

もしかすると、世界にもここまでバイタリティある男はいないかもしれない。

 

本書には、生産性向上にあえぐ現代日本のビジネスマンのいち理想像が記されている。1970年代から、自然と副業がなされ、学生たちが勉強していた。アメリカは歴史の浅い国だが、若者はバイタリティに溢れ、最大の経済大国であることを改めて実感してしまう。



書評『人生に必要な30の腕時計』ガンダーラ井上 2003年

男には2種類いる。時計をつける男とつけない男だ。

 

私自身、時計はつけない主義だった。

だったと過去形にしているのは、つける可能性が出てきたからだ。

 

本書は、人生の様々なシチュエーションに合わせて、ぴったりの時計はどんなものなのか、

著者独自の観点で紹介される1冊だ。

 

たとえば、以下のような場面が想定される。

 

「仕事の折衝で、大物を相手にしなければならないとき」

 

「夜が明けるまで、遊び倒したいとき」

 

「フランスかぶれの彼女を振り向かせたいとき」

 

「小腹がすいたとき」

 

等々。

 

私は今まで時計とは時間を確認するツールであり、上に記載したような具体的な

利用シーンを想像することはなかった。

 

しかし、本書を読むと時計にも様々な「顔」があり、単に時間を確認するだけでは到底片付けられないとても奥深い世界であることを知る。

 

その理由の一つには、著者が元々大手電器メーカーの宣伝部に13年間在籍していることも関係しているかもしれない。自社の製品にストーリーを持たせて販売する宣伝部の社員。やはり、製品の背景を語るのがうまい。

 

モノの魅力を知るきっかけの一つに、そのモノ知られざる背景を知ることがあると思う。

 

たとえば、レマニア・ヨットタイマーという時計は、フリーダイビングの神様ジャック・マイヨールが使っていたことでも知られている時計だそう。ポイントは色彩で経過時間を知らせてくれる機能があること。水に潜る人にとっては、視認性が重要だったということらしい。

 

物事は何でも知れば知るほど面白くなる傾向がある。

他の物事との違いを認識でき、語れる内容も深くなっていく。

 

本書は時計知識を深めたい男子にとっても有益だが、趣味を持ちたいと思っている人、キュレーターになりたい男子にとっても有益なモノとなるに違いない。

書評『人生は、だましだまし』田辺聖子 2005年 

読売新聞の広告で「この国は、本を読まない大人が増えた。だから子供みたいな国になってしまった」という内容を語ったのは、田辺聖子である。

 

本書は、エッセイ仕立てだが、飲み仲間の「フィフティちゃん」と「イチブン氏」との会話を通じ、人間の生態、特に男女のあれこれを通じて、著者がアフォリズムを導き出す示唆に富んだ1冊である。

 

私は田辺聖子をあまり読んだことがないため感じるのかもしれないが、

とにもかくにも、難しい熟語が夥しい数登場する。

 

辞書を引かずにこの本を読み通せる人は、相当博識な人だと思う。

 

先日作詞家の松本隆が出演したテレビ番組でこんなことを言っていた。

 

「作詞家を志す若い人がやっておくべきことは何かありますか」

 

「本を読んで語彙を増やすことです」と発言。

 

言葉を知らないと表現などできないという。

至極当たり前のことだが、意外と見過ごされがちな事実ではないだろうか。

 

絵の具の種類が多いほうが、より色彩豊かな絵画を創造することができるのと同じで、

ボキャブラリーが多いほうが、人生の機微に気づき豊かな表現が可能になるだろう。

 

細かなこぼれ話ではあるが、辞書を引く楽しみも紹介されている。

目的の言葉だけではなく、周辺の言葉の意味も知ることもできると。

 

言語化できることは、物事を相対化して認識できるということ。

つまり、様々なことを客観視できるということだといえる。

 

とかく窮屈で他人に不寛容になってしまうことも多い世の中。

大先輩の言うことにじっくりと耳を傾けながら、語彙を増やしていくと一味違う人生が待っているかもしれない。

書評『舶来屋一代 ~はんどばっぐにほれたおとこ~』上前淳一郎 1983年

高級ブランドの商品が並んでいる場所といえば、

ぱっと思い浮かぶのは、丸の内と銀座である。

 

なぜあの場所にブランド店が集中するようになったのか?

その背景には、ヨーロッパの一流品にほれ込んだ一人の男の奮闘があった。

 

主人公の茂登山長一郎、通称長さんは、戦後の動乱期に闇市の商人としてスタート。

やがて、エルメスやグッチ等ヨーロッパの超高級ブランドを日本に持ち込む時代の寵児

と躍り出る。本書は、太平洋戦争から帰還した男が闇市での仕事を皮切りにブランドを日本に持ち込む第一人者となるまでを描いたノンフィクションだ。

 

絶版のため中古でなんと8000円ほどするが、正直お釣りが来るほどの価値はある。

 

経営者、男は「かくあるべき」ということが学べるサクセスストーリーには違いないが、

本書が出色であるのは、ここに描かれる長さんの「引き際」の見事さである。

 

長さんは、美味しい儲け話なども、嫌な予感がした段階で素早く手を引く。

また、あぶく銭が手に入っても、また稼げばいいと困った人にあげてしまう。

 

起きた事象から教訓を得る抜け目のなさにくわえ冷静な判断を忘れない。

しかし、根っこは厚すぎるくらいの情で人に可愛がられる男だ。

 

このバランス感覚と親しみやすさは、実は女性に奥手だったことも関係しているのではないかと私は読みといた。政治家でも女性スキャンダルがない人は失脚しないケースが多い。

 

そんな長さんの元に足を運ぶ顧客には電通の吉田秀雄や作家の今東光

がいた。この人たちとの掛け合いがまた素敵で物語に引き込まれる要因の一つとなっている。思わず人に話したくなるこぼれ話が満載なのだ。

 

たとえば、ライカのカメラと四谷の80坪の土地の値段が同じだった時代の話、電通富士登山をする本当の狙い、一流ブランドは王宮の近くにあること、などなど。興味深いエピソードが数多く紹介される。

 

時を越えて生き残っていくものとは何なのか。

一流品を追い求めた男の生き様から学ぶことができる。