本書に収録されている素敵な1節があります。
とある大学の先生が、授業の終わりに生徒に声を掛けられました。
「今私がここにいるのは、あなたのおかげです」と。
その学生のお母さんは、彼女を妊娠した後、大変なつわりに苦しんだそうです。
中絶することも考えたくらい、大変なものだったそうです。
ある時、先生が監修を務めるラジオの音楽番組で、
バッハ作曲のマタイ受難曲を聞いた際、
そのお母さんは、世の中にはこんなに美しい曲があるんだ。
生まれてくる子どもに聞かせてあげたい。
とそう思ったそう。
私は、この件を読んで、とてもいい本に出会えたなと思いました。
題名の通り、本書を読んでから、クラシック音楽を聞くと、
より人生が豊かなものになります。深みが出てきます。
その理由は、古くから生き残ってきた音楽が生まれた背景や、作曲した人の人となり、
などに触れることで、より感情移入がしやすくなるし、作品世界をイメージしながら、
音楽を聞くことは、脳にも心にもいいことだと思うからです。
そういう意味では、本書はクラシックの入門書ですが、
音楽の背景を知ることで、世界史に興味を持ち、作家の人となりを知ることで、
より人間への好奇心が刺激される作品でもあり、クラシック音楽以外のことにも
興味を持つきっかけを与えてくれる刺激的な1冊だと言えます。
私はこの本を読んで、ブラームスという作曲家にとても興味を持ちました。
久しぶりにCDショップへ行き、交響曲が収録されたCDを購入しました。
母にそのことを話すと、
「凄い偶然ね。あなたのおじいちゃんが一番好きだった作曲家がブラームスだわ」
折に触れ似ていると言われてきた祖父との好みの類似性に、
とても不思議な気持ちになりました。
音楽を深めていくと人生が深まっていく。
そんなことは大いにありうると本書は教えてくれました。