最初に断っておくが本書は、動物論、ゴリラ論に終始しない。
本書は、あるべきリーダー論といっても良い書籍である。
ゴリラが好きな人のみならず、全社会人に捧げたい1冊なのだ。
みなさんはゴリラに対してどんなイメージをお持ちだろうか。
大きい、ちょっと怖い、ドラミング、握力が凄い、ゴリラダンク等々
見た目から来る漠然としたイメージだけを持ってしまう人も多いかもしれない。
本書を読むと、ゴリラの世界の奥深さの一端に触れることができる。
著者の二人は、ゴリラは人間を超えていると語っているのだが、
その、根拠となっている生態の一つが、「ゴリラは背中で語る」ということだ。
敵が近くにいるときに、ゴリラはいたずらに威嚇をしたりしない。
シルバーバックという背中の毛を見せながら、「近づくと危ないぞ」ということを示していく。後ろから攻撃されるリスクもあるのに、決して振り返らず、背中で語るというのだ。
確かにかっこいい。一方でニホンザルときたらどうだろう。
敵の周囲を走り回って、キーキーと声を上げる。
非常にみっともないではないか。ただ、こういう大人のほうがマジョリティを占めているのが、残念ながらわれわれの人間界なのだろう。背中で語れる男などほんの一握りである。
小菅さんは元旭山動物園の園長だが、学生時代は柔道をやっていたらしい。
柔道の団体戦でとっていた戦略が紹介されていて、非常に興味深い。
テーマは「負けない柔道」。体も小さく、パワーでも劣っていた小菅さん率いる北海道大学は、とにかく負けないために、耐え続ける柔道を選んだ。
その姿を見て、ある先輩などは、「闘争心がない」といったと言う。
小菅さんは言う。「闘争心とは耐え続けること」であると。
なんともかっこいいではないか。
ゴリラも同じで、無駄な争いはしない。むしろ平和主義と言っても良い。
ただし、リーダーとして仲間のことは全力で守る。
ゴリラ:リーダー→みんなに推薦されてなる。
サル:ボス→名乗りをあげてのし上がる。
大きな違いだ。大体理想の上司にランクインするような人は、みんなに選ばれるリーダータイプであることが多い。
世の上司の皆様、あなたはリーダーになれていますか?