家作りは一生の中でもかなりの大仕事だが、それを根本から考え直す一冊。
日本では、家は南向きが良いと無条件に信じられている節があるが、著者はそこから疑ってかかっている。
なぜなら、絶望的に夏が暑い日本で快適な住居を求めるならまずは、日光の遮断を考慮しないといけないからだと主張する。
著者は、長くイギリスに暮らしていたこともあり、整然と計画された宅地と外観は変えず中身を変化させるイギリス人の住宅に対する合理的な精神を紹介している。
その上で、日本の家屋に備えられた機能を丹念に見直していく。
たとえば、ベランダは本当に必要なのか?と。
日本の家々とヨーロッパの家の大きな違いの一つにベランダの存在があるという。
ベランダがあることによって、日本人は洗濯物を外に干す。イギリスでは、洗濯物が外に干されていることを見かけることはないという。
たしかに、洗濯物が立ち並ぶ街とそうでない街どちらが景観の美しさが際立つかは、比較するまでもないだろう。
また著者は、和室など誰もがなんとなく必要だと感じているものにも容赦なく厳しいまなざしを向ける。
要するに、家を建てることは、自分の生活哲学を反映させることであり、考えなしに住んだり、建築家に設計を丸投げをするなど暴挙に近いと著者は述べる。
いざ家を建てるという段にならないとなかなか家について考えをめぐらせることはないだろう。
人生において何を重視するのか?
家作りを通して見えてくるものは非常に多く、重要なものばかりだと感じる。
家作りなどまだ先、またはマンションでいいと思っている人にこそ気づきの多い
一冊だと思う。
随所に紹介される写真に付与される著者のコメントも本書の魅力の一つだ。