著者の川島蓉子さんは、伊藤忠グループ子会社のシステム会社役員を務めるかたわら、
この20年間毎日原稿を書いてきた、いわば兼業作家と言って良いユニークな経歴の持ち主。一方の糸井重里さんは、本書を手に取ろうとする読者の方には説明不要かもしれません。
本書は、川島さんがインタビュアーとなって、糸井さんに質問をぶつける
インタビュー集となっております。
本書の新しさを一言でいうと、資本主義社会にどっぷり浸かった組織人である川島さんとの対談である点です。これまで糸井さんは、クリエイターをはじめとした、”個人力”でモノを創っている人と仕事をされるケースが非常に多かったですが、本書はいわゆるビジネスマンとのやりとりとなっており、その点が、実は本書をユニークなものにたらしめています。
ビジネスの世界にどっぷり浸かったものなら、読み進めるとすぐに気づくのが、
糸井さんから出てくる回答が、ビジネス界の常識とほぼ真逆であることです。
数字的な目標を明確にしない。
生産性向上=効率UP ではない。
等々
一見すると、逆張りともいうべき考え方がたくさん登場します。
川島さんがインタビュアーであることで、その独自性が一層際立ちます。
ではなぜ、糸井さんの考え、もっというとほぼ日のやり方は、
ビジネスの世界で常識とされている考えと逆行をするのか、
また、新しいものとして注目を集めるのか?
本書にその答えがあります。
そしてその答えとは、
ほぼ日は、面白さを価値と捉え、面白さをお金に変える力を持つことができたから。
私は、そのように読み解きました。
では面白さを優先するとは一体どういうことなのか?
たくさんのお客さんよりも目の前のお客さんを大切にする
規律ではなく自由を
人を縛らず、解放する。
そんなほぼ日の思想が、糸井さんの言葉を通じて、
じっくりと滲み出してきます。
ほぼ日の行動指針は、「やさしく、つよく、おもしろく」
おもしろさを生み出す土台には、やさしさとつよさがあります。
人のことを考え続ける思いやりと、なんとしても実現しようとする
強さ。
この二つを持ち合わせている企業は、ほぼ日以外にも
実はたくさんあります。
でも、おもしろさを生み出すことができる企業は
ほんの一握りしかない。
おもしろさを生み出せる人がほんの一握りしかいないように。
では、おもしろさを生み出すためには、どうすればいいのか。
それは読んでみてのお楽しみです。