この本を読むためなら、今日は寝不足になってもいい。
そんな本にときたま出会うことがあります。
『紅い鷹』は、まさにそんな小説です。
ジャンルはハードアクションですが、
読み進めるうちにどんどん思いもよらない展開が待ち受けています。
主人公の工藤雅彦は、大手の文具メーカーに勤める会社員。
営業成績優秀なのに、ある日、リストラに近いような左遷人事を言い渡されます。
納得がいかない工藤は上司に噛み付き、査定のやり直しを求めます。
人事本部長の佐久本と課長の岡部と面談をしました。
結局、査定をやり直したものの、言い渡されたのは、やはりリストラ部屋への異動でした。リストラに近い処遇を受けても、恋人である亜香里は、献身的に工藤を支えていきます。
本作の冒頭は、主人公の工藤が高校生に絡まれるシーンから始まります。
病気の母親を守るための大切なお金を無慈悲な若者にとられそうになる工藤。
ボロボロにされながらも必死に抵抗しますが、意識は遠のいていきます。
そこに一人の男があらわれ工藤を窮地から救い出します。
男の名は、小暮俊介。大手スポーツ用品企業の
小暮スポーツの社長です。
けがの完治した工藤に、小暮はトレーニングセンター行きを
命じます。
就職先の提案を受けた工藤は、てっきり小暮スポーツのインストラクターの養成所と思い、センターでのトレーニングをうけておりました。
しかし、そこは、工藤の思惑とは異なりとあるプロフェッショナルを養成するための
”学校”でした。その職業とは、亡くなった工藤の父親とも関係のあるものだったのです。
工藤、工藤の亡き父、母、小暮、佐久本、恋人亜香里。
登場人物全員が、深い闇を抱えていることが
本作のポイントであり、最大の読みどころとなっていきます。
臨場感たっぷりに情景が思い浮かぶのは、作者の筆力のたまものと
いえるのでしょう。読みだしたら、先が気になってしょうがなくなる。
一気読み必至のアクション小説です。