安田善次郎とは、安田財閥の創始者でみずほ銀行、安田生命火災保険の創始者でもある、史上最強の経営者といっても過言ではない人物である。
本書のカバーにも記載されているのだが、個人で築いた資産は、1921年当時で国家予算の8分の1である。%でいうと12.6%。ちなみに孫さんで0.9%、柳井さんで1.3%といわれている。いかに巨大な富を築いていたかがわかる。
この本は、安田が若者に向けて人生を生きていく上で大切なものを説いた書籍である。
作者の守屋淳が現代語訳をつけ出版した力作である。
こういう書籍が現代人に読みやすく復活することは素晴らしいことだと思う。
では安田善次郎とはどんな男であったか。
一言で言ってしまえば「ルーティンの鬼」である。
善次郎式人生訓はがっつりまとめると以下となる。
①習慣づけること
②質素倹約
まず、①だが善次郎は厳しい父の元非常に厳しい幼少期を過ごしている。
それを裏付けるエピソードが、写本の話だ。当時はまだ印刷技術が発達していないため、
本は、丸写ししたものを販売していたらしい。筆耕というらしい。
善次郎は夜のルーティンとして、毎日30枚書くことを日課としていた。どんな日であっても、必ずやり遂げていたという。
本を読むのがそもそも好きだったと述懐しているが、一日30枚書き続けるのは並大抵のことではないと思う。
②の質素倹約だが、善次郎の教えは現代でも活かされている。
収入のうちの2割を貯蓄に回すという考えだ。ファイナンシャルプランナーでも勧めてくれる人がいる考え方だ。これを実現するために、収入の8割で生活を組み立てるという計画が非常に重要であると実感した。
この考えを実行するとおのずと家庭も企業と同様にお金の出入りを明らかにし、経営することが身についていくだろう。
「ひとたび決めた方針に向かって、どんな誘惑や困難がきても惑わず屈せず、急がず焦らず、少しずつ一歩一歩を順序正しく踏み固めてコツコツと進むこと、これすべての人間が例外なく成功できる出世術である」
莫大な資産を築いた仕事人の言葉は、極めてシンプルだが、実行する人がおそらく数%もいない非常に厳しい道のりなのだ。