あなたには好きな画家がいるだろうか?
本書は好きな画家を持つことがいかに幸せなことかを教えてくれる。
原田マハさんは、元々アートの世界に身を置いていた作家である。
アートを仕事にしていたときと比べると、肩肘張らずにアートに向き合えるようになったという。
楽しいアートエッセイというのが本書の印象であるが、生業から離れたからこそ、
書けたものなのかもしれない。
本作の中で取り上げられるのは、印象派を代表する画家、モネ
モネの作品をはじめ様々な画家の作品を取り上げながら、その魅力を語っていく。
印象派の絵画がなぜここまで日本人を含め多くの人を魅了するのか?
その疑問にも答えてくれる1冊となるかもしれない。
私が読んでいて一番感銘を受けたのは、「妄想のストック」という彼女の言葉だ。
この妄想のストックは現存する画家足跡を辿りながら彼女の中に蓄えられている。
本当に手持ち無沙汰な状態で妄想を行うことは並大抵のことではない。
やはり何かきっかけになるもの=メディア(媒介)があるからこそ、
思いをめぐらせることができるのだろう。
それが、心をひきつける絵画であれば、妄想の営みは貴重で豊かなものとなるはずだ。
じっくり思いを巡らせ、イメージを膨らませる。さらには、画家が関わった土地に足を運び、歴史的な背景も知る。
贅沢な大人の遊びといえるだろう。