男には2種類いる。時計をつける男とつけない男だ。
私自身、時計はつけない主義だった。
だったと過去形にしているのは、つける可能性が出てきたからだ。
本書は、人生の様々なシチュエーションに合わせて、ぴったりの時計はどんなものなのか、
著者独自の観点で紹介される1冊だ。
たとえば、以下のような場面が想定される。
「仕事の折衝で、大物を相手にしなければならないとき」
「夜が明けるまで、遊び倒したいとき」
「フランスかぶれの彼女を振り向かせたいとき」
「小腹がすいたとき」
等々。
私は今まで時計とは時間を確認するツールであり、上に記載したような具体的な
利用シーンを想像することはなかった。
しかし、本書を読むと時計にも様々な「顔」があり、単に時間を確認するだけでは到底片付けられないとても奥深い世界であることを知る。
その理由の一つには、著者が元々大手電器メーカーの宣伝部に13年間在籍していることも関係しているかもしれない。自社の製品にストーリーを持たせて販売する宣伝部の社員。やはり、製品の背景を語るのがうまい。
モノの魅力を知るきっかけの一つに、そのモノ知られざる背景を知ることがあると思う。
たとえば、レマニア・ヨットタイマーという時計は、フリーダイビングの神様ジャック・マイヨールが使っていたことでも知られている時計だそう。ポイントは色彩で経過時間を知らせてくれる機能があること。水に潜る人にとっては、視認性が重要だったということらしい。
物事は何でも知れば知るほど面白くなる傾向がある。
他の物事との違いを認識でき、語れる内容も深くなっていく。
本書は時計知識を深めたい男子にとっても有益だが、趣味を持ちたいと思っている人、キュレーターになりたい男子にとっても有益なモノとなるに違いない。