書評習慣

書評を中心に様々なコラムやエッセイを書いております。

書評『大奥の奥』鈴木由紀子 2006年

教科書に載らない人たちが歴史を動かしている。

本書を読んで得た素直な感想だ。

 

いつの時代もフィクサーと呼ばれる人たちがいる。

歴史の表舞台には立たず裏で糸を引く人たち。とかく悪者が多いイメージだが、

大奥の歴史上も表舞台の主役を圧倒するような女傑が多数存在した。

 

男子禁制の秘められた世界、大奥。

誰もがなんとも言えない魅力を感じているであろう。

 

実際にテレビドラマなどでも放映されると、人気を博すことが多いという。

本書は、その多くの歴史を関連人物を挙げながら丁寧に紹介していく力作である。

 

権力闘争の背景には、人を狂わしたスキャンダルや事件、ルールの設立がある。

本書の一番の魅力はこのあたりのエピソードにあるかもしれない。

 

たとえば将軍のセックスは、あるときから公然と監視されるようになった。

少し理解に苦しむと思う。

 

本文を引用してみたい。

 

「いよいよお気に入りの側室との御寝となる。ここで、現代のわれわれの感覚からすれば信じがたい光景が展開する。六代将軍家宣以後のことと思われるが、(中略)将軍と側室が同衾している寝所に、御添寝役の御中﨟と御伽坊主の二人が、将軍の寝床から少し離れて両側に床をとり、将軍に背を向けて寝ずの番をする。」

 

これは、事の一部始終を御年寄に報告するためだそうだ。閨での側室の言動を警戒することが目的だったそうだ。

 

また、女人禁制の大奥であったが、様々な人が出入りし手におえなくなったこともあった。風紀が乱れ始めると、信じられない検査が始まる。

「下々のものはからだが汚れている」という理由で、大奥に出入りするものは風呂に入れて

性別を確認させられるということもあったという。現代の高校の頭髪検査などまだまだ可愛いものだと思ってしまう。

 

極めつけは、敵対する側室が生んだ子供に対する残酷な仕打ちである。

胸を痛める話も出てくるが、権力の維持のためなら、人はどんなことでも仕出かす

という真実を本書を通じて理解することができる。

 

とにかく登場人物が多く関係性がややこしくなりやすい。

 

ノートに家計図を描きながら読むと、歴史の背景や人間関係を俯瞰することができるので、より楽しみが増すと思う。