書評習慣

大嶋暫と申します。書籍応援業。おすすめ本に関する書評ブログです。様々なコラムやエッセイも書いております。少しでも面白い書評が書けるよう奮闘中です。

書評『京都のおねだん』大野裕之 2017年

チャップリンの愛した味

しゃべってはいけない喫茶店

抹茶パフェ発祥の地

レンタル地蔵で作るお祭り

水にこだわる美容室

 

こんな旅行プログラムがあったら心躍ってしまう人も多いだろう。

 

通常、旅行をする時に参考にするのは、旅行雑誌やウェブサイトが中心である人も多いと思う。本書は、隠れた魅力を見つける京都観光ガイドとなりうる1冊である。

 

著者はチャップリン研究の専門家で京都大学出身だ。生まれは大阪の茨木なので生粋の京都人ではない。

 

本書はその題名の通り、京文化の「おねだん」を知ることで京都への理解を深めていこうという内容の1冊である。抹茶パフェの値段から少し敷居の高い花街の値段まで、京都の様々な文化が紹介されている。

 

各章のテーマについても興味深いものが多いのだが、特筆すべきは、随所に紹介されるこぼれ話である。

 

チャップリンが宿泊した柊家の女将の心遣いやしゃべってはいけない喫茶店、地下水を超音波で見つけるビジネスが実は発達している。などなど。

 

知れば知るほど奥深い京都が見えてくる。

 

文化というものはつくづく、歴史的背景を持ち、人々が大切に守り語り継がれてきたものに宿る本書を読んで思う。

 

そして、つい人に言いたくなる魅力を備えている「文化」こそ、あってもなくても困らない無駄なものということもできると思う。

 

この「あってもなくても困らない」というのが、実は奥深い魅力をかもし出す最大の要因なのではないだろうか。

 

またあってもなくても困らないものを許容することが文化レベルを測る上でのバロメーターになるのかもしれない。とかく批判的言説にまみれやすい昨今だが、一呼吸置いて、対象を許容、肯定する度量を持っていたいものだと改めて思う。

 

優れた書籍は、一流のブックガイドにもなりうるものであるが本書もまさにそうである。

本書でも様々な先人の著作が紹介されているが、さらに京都への理解、日本文化への理解を深める上で、参考になるものが多い。

 

本書は読み通すことで、次に読むべき本まで見つかってしまう素敵な1冊だ。