人生でもっとも無駄な時間は言うまでもなくドライヤーの時間である。だったら、坊主にすればいいではないかという声も方々から聞こえてきそうだ。坊主にしたいという思いは常々ある。しかし眼前に悠然と立ちはだかるのが我が家族である。
はなはだ遺憾ではあるものの家族の支持がなかなか得られない。つい先日も届出を出したが、あっさりと不信任案をつきつけられてしまった。理由はなんか違うんじゃない?というもの。この民主主義社会にあってなんとも心もとない理由だが、それ以上何もいえないあの感じはなんであろうか。なので坊主にすることは当面あきらめている現状だ。
ドライヤーの最中は考え事をするにも音がうるさくて適さない。
毛量が多いほうなので、おそらく髪の長さは10センチないくらいだと思うが、3分くらいかかってしまうのである。
3分といえば、随分と重みのある時間である。ともすれば大変長く感じてしまうこともあるだろう。たとえば、信号待ちの3分はどうだろう。かなりストレスフルなのではないか。電車を待つ3分も同様で、心持しだいでは途方もなく長いといって差し支えないだろう。ましてや現状回復をひたすら目指すだけが目的のドライヤーの時間などは、耐えがたきものとなる。
耐え難きを耐え乗り越えることが、大人の嗜みであることは理解しているつもりだが、
先日ついにドライヤー中に「これ何の時間?」とブラックマヨネーズ小杉さんの厳しくも愛のあるツッコミを入れた次第である。堪忍袋を緒が切れてしまったのだ。
緒が切れてしまった以上、何かリカバリー策を講じなければならない。
マイナスを生んでしまった場合に埋め合わせるのは社会人の義務である。
「どうやってリカバルの?」。そこかしこから聞こえてきそうである。
ドライヤーをしながらでもできることはなにか?
悩みに悩んだ挙句、私はドライヤーの時間を使って勉学に励むことにした。
今とある資格を取るために勉強を続けている。その勉強をすることにしたのだ。
うちは洗面所の真横に洗濯機が隣接しているのだが、その上にノートを広げ復習しながら髪を乾かすことにしたのだ。
する今度はまた不思議なことが起こった。復習に夢中になるあまり髪がすぐに乾いてしまい、この3分で物足りない気分になってしまったのだ。
物事はなかなか思い通りに進まないものである。