これは、これからの父親にとっての教科書になる。
本書を読み終えて、持った率直な感想です。
登場するのは、40代までの経営者やビジネスリーダー達です。
それぞれが独自の子育て観を持ち、日々の子育てに向き合っています。
向き合うなんて言葉はもしかしたら堅苦しすぎる過ぎるかもしれません。
等身大で仕事にも子育てにも真摯に向き合う男性の姿は、
一昔前までは、あまり見られなかったのではないでしょうか。
私は強くそう思います。
昔の男は背中で語ってきたところがあります。
そこには、確実に1つの流儀があり、子どもにもある意味、
メッセージとなっていたと思います。よくも悪くも所属する組織にフルコミットしてきた。まさに、24時間戦えますか?の世界だったのでしょう。
ただ、それが通じたのは、労働に没頭すれば、国が富み個人にもある程度還元された
高度経済成長期というフェーズに、日本があったからなのかもしれません。
今よりも女性の社会進出が進んでいなかったことことも一因かもしれません。
企業全体の成長が踊り場を迎え、劇的な成長よりも生産性の向上が求められる時代、
創造性や変化に順応していく柔軟性が求められる時代においては、
仕事にも子育てにも自然体で無理せず向き合う父親の役割が増していくような気がしています。
そういう意味では、この本は”父親”の教科書になりうる本だなと感じました。
登場する人物たちは、仕事にも子育てにも全力投球する今までにいなかったタイプの
父親たちです。もっと言えば、いままでも一定数は存在していたものの、
あまり知られることのなかった父親像かもしれません。
もう一つ、本書に登場するような父親が増えることで、
これから壮絶な格差社会が訪れるかもしれないなという
漠然とした危機感もあります。
なぜか。過去に比べればこれからの父親たちのほうが、子育てに強く参画をしていくことが考えられます。一見いいことに見えますが、なぜ危機感を感じるのか。
それは、子育てと経営は類似していると考えるビジネスプロフェッショナルの子どもたちは、いわば仕事のプロから直接薫陶を受けることになります。
いわば、母親×父親の子育てが始まるわけです。
しかも、その父親達の中には、教育機関の人を凌駕するだけの知性やスキルを身につけている人も少なくないでしょう。
そうなると、学力の格差だけではなく、子どもが受け取る情報量や知見の絶対量に
恐ろしいまでの差がつくことになります。
かつての父親は、それこそ24時間仕事に打ち込み、子どもに背中を見せる事しかしてきませんでした。実際の会社においても、そういう上司の姿を見て、成長していく一部の部下たちもいたことだろうと思います。
しかし、直接教育を受けるとなれば、その効果、影響力はより大きなものになる可能性があります。本書にも登場する、伊佐山元さんの家庭では、夜の時間帯を使って、家族で1時間勉強をする時間があるそうです。
365日続けているとすれば、有益な情報交換会を年中無休でやっていることに
なります。これがどんな差につながるのか。想像するだけで、恐ろしいではありませんか。
これからビジネスプロフェッショナルの下で育つ子供たちは、
今まで見られなかったレベルの情報量と問題解決力を備える可能性を秘めています。
日本国全体で見れば決して悪いことではないですが、
経営、管理をする資本家層と使われる労働者層と、よりくっきりはっきり分かれていくのではないか。そんな不安を感じるきっかけにもなってしまいました。